2020年5月 9日 (土)

昭和漫画館青虫 048 浜慎二

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浜さんというと週刊誌での恐怖漫画で記憶されていると思うが
貸本の頃から数少ないながら描いている
57年頃は杉田民平名義で堅めの絵柄で思索的な作風
58年頃からは短編誌に少しひねくれた内容の作品を描く
こんなところから特異な恐怖ものへつながるように見えるが
貸本単行本の少女向けには実にストレートな作品を描いているのが不思議
名作「悲しき二つ星」の前作、「母の想い出」を青虫で読む

倉石さんは親方のおじょうさんで家は金持ち、相当な屋敷に住んでいる
子守の女の子島野利子は父が病気で母はなくなっている
倉石家の垣根を子守しながら見に来ている
塀を壊すのを悲しそうに見ている
元は自分が住んでいた家

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女中をしているおヨネさんもそのころからいた女中さん
利子の父は役人をしていたがだまされて警察に逮捕され、母はショックで死ぬ
キンモクセイの香りを利子一家が楽しんでいたというのを聞いた倉石さんは若い者にキンモクセイを抜き取らせる
同じクラスで、利子が委員長に選ばれてねたむ倉石
利子の唯一の思い出として残った母が使っていた鏡
今はおヨネさんが持っているが、取り上げて古道具屋へ運ばせる
売れなくていいから5万円の値段で置いておかせる
売り物を見た利子は悲しく、さらし者にされている鏡をなんとかして取り戻したいと思うのだが
そんな彼女の気持ちをあざ笑うように、6万円に値あがっている

倉石さんは、利子の父の汚職をいいふらし、体育の時間に集めた金がなくなった時は利子を犯人扱いに
その犯人は見つかり、父の汚職で真犯人も見つかる
それが倉石氏で逮捕されるが、利子は倉石さんを責めることはしない
母の想い出の鏡は売れてしまったが、心の中に母は残ると悔やんでいない

倉石のお嬢さんがしっかり悪者として描かれていて物語を盛り上げている
2013年の青虫訪問も三日目、最後に近づいた
ベテラン竹田慎平さんの57年「千鳥の星空」を読んで退室する

2020年5月 8日 (金)

昭和漫画館青虫 047 遠藤まさお

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13年は夏に北海道立図書館を訪れている
その時、遠藤さんの「月夜の浜千鳥」を読んで深く感動した
55年はユーモラスな作風だったのが56年後半から少女もので飛び抜けた
青虫で57年の「乙女詩集」を見つけて手に取る

A組の仲良しグループ、級長の雪村はるみはパパが実業家でママが社交界の花形と恵まれているが
父は戦争のどさくさで母と双子の片割れをそれぞれ持って離ればなれとなった
母はその後、銃弾を受け、娘を松子という婦人に預け、自身は記憶をなくしてしまった
なんと先生になって、今ははるみの学校へ赴任している
松子が日本へ戻って一人育てたのが、はるみの級友妙子

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運命のいたずらが次第に読者に明らかになるが
父謙三は、松子から事実を知るが、先生には秘密にしようとすべてを自身のうちに納めておく覚悟をする
父の苦悩を最後に持ってくるあたり、なかなかの名作です

2020年5月 7日 (木)

昭和漫画館青虫 046 わたなべまさこ

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高野館長は、名のある作家の作品より、本の保存のよさを第一に蒐集したという
そのため、わたなべさんのB6単行本は少ない
貴重なのは、岡田あきらさんと共著の「伊豆のおどり子」
55年の発行だから、まだ絵が熟していない頃
岡田さんが前半を描き、わたなべさんが後半を描く
川端作品からヒントをえているのでしょうが、独自の展開
後半は
両親がなくなった牧花代は旅の芸人に拾われ伊豆を回っている
偶然出会った学生の上原の世話になり花上女学院にいれてもらう
バレエを見て感激し、習うことに
バレエではドロップさんがライバル

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花代が舞台に立つのに嫉妬したドロップは床板に細工をして花代が割れた板から落ちてしまう
犯人がわかっていたが許す花代にドロップも涙を流して仲直りする
芸人の親方が下谷で病気になっていると聞いた花代は、親方の世話をするとまた伊豆へ帰ってゆくというラスト

伊豆の踊子にバレエまでまぜる大盛り内容
わたなべ作を読めたことは収穫

2020年5月 5日 (火)

昭和漫画館青虫 045 少女向けB6単行本

貸本単行本に描いた漫画家は、月刊漫画誌に描くことは少なかったので名前はあまり知られていないかもしれない
そんな中でも
彩田あきら、小坂靖博、高木康之は優れた書き手
彩田さんは58年の「マドロス乙女」を読む、港で暮らす少女キッキの物語
小坂さんは58年の「仮面の女王」、ダイヤ国の謀反に、王女を助けて活躍するルミ子の物語
少年向けのストーリーをヒロインがこなすところがおもしろい
高木さんは57年の「涙ふたたび」、貧しさからの盗みで刑務所に入れられた母と娘アケミが再会する物語
続いて読んだ中島利行は絵がさらにうまい
月刊誌でも活躍し、週刊誌でも連載を続けただけの力量が見える
57年の「はるかなる心」

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舞台は西部劇時代のアメリカ
エミ子の父若木伍郎は牧師をしているが東部へ行こうという、妻が無事なら見つかるかもと
エミ子が四つの時、母キャサリンと兄イサムも連れ西部へ向かい、途中インディアンに襲われ父母が行き別れとなっていた
東部への旅で、ワイアットアープと出会いエミ子は拳銃を習う
一年で上達するが伝染病で父が死に、ワープと別れて東をめざす
父は遺言で、日本は幕末時代、先生とする横井氏が開国の暴徒に殺され、遺児勇次郎を連れて日本を離れたという
キャサリンを妻に西部へやってきたと形見を渡される
その形見を途中で盗まれたエミ子は、とある町にやってくる
その町でイサムがシェリフをしていた

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母をおいて父を捜す旅に出た途中、この町でギャングを倒したのがきっかけで請われてシェリフを引き受けてから忙しい毎日を送っていた
盗人が落とした黒髪が入った形見袋を拾ったインディアンの娘サリーを追いかけているエミ子を見て、兄のシェリフが悪者と間違う
戦う時にエミ子が叫んだ「日本人として戦う」という言葉にようやく兄が妹とわかって分ける
二人は母のところへ向かう

2020年5月 4日 (月)

昭和漫画館青虫 044 大石まどか

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三日目はやはり貸本少女漫画を多く読む
中でも、1958、59年頃の大石さんは静かな展開のうちに深い情感を抱かせる名作を続けている
「母はなげかじ」「夢路いくとせ」とも、京都マンガミュージアムに上巻だけがあり読んでいたもの
続きが青虫にあって、ようやく読了する機会を恵まれた

「母はなげかじ」

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上巻では、男手一人で自分を育ててくれた父が事故で亡くなり、自分が捨て子だと知った早苗
かつて主人が病でなくなり、赤ん坊を育てられず捨てて身投げした浅野さん
自分は救われて、その後、学校の先生となるが捨てたこどものことをわからないまま生きてきた
苦労の末、二人が再会する物語
「夢路いくとせ」では、父の酒癖のため苦労する三枝子
死んだと聞かされていた母が家を去ったと知る
父も苦労の末、母と和解し、親子三人の暮らしが始まるというもの

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あらすじだけ書くと、平凡な話になる、絵柄も派手さがないが
ともかく展開がうまく、いつの間にか身につまされてしまう

2020年5月 3日 (日)

昭和漫画館青虫 043 赤本

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続いて赤本を何冊か閲覧する
遠藤まさお「ポックリ島の冒険」50年
岡田あきら「ジャングル・プリンス」
大野きよし「ブラック王子 第2編」
後2作は1950年代前半

赤本では、漫画より挿絵的な絵柄がおもしろかった
西田静二さんの「密林の秘境」48年
象の墓場を狙う悪漢をターザンが阻止するというストーリー

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2020年5月 1日 (金)

昭和漫画館青虫 042 付録本 安田卓也「第四の世界」

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青虫に付録本はたくさんないが、目をひくものがあった
作品の少ない安田さんのこれも珍しい付録本
雑誌に描いているのは知っていたが、付録があるとはびっくり
55年「少年画報」7月号の100P読み切り付録

ダイナミック博士がタイムマシンを完成したというニュースが流れる
人々の前に博士を車で連れてきた助手ピーターの傍らではダイナミック博士が死体になっている
ここからピーターの回想が始まる
博士を乗せて運転しているとハンドルが動かず車は崖から転落する
幽霊が博士を引き取りに来るとトミーという四次元の男が現れ止めるが博士は連れ去られる
トミーに案内されてピーターは四次元の世界を見る
東京の日比谷公園には四次元世界の科学省が建っているではないか
タイムマシンを使うと四次元世界に入るだろうから、博士を止めたというトミーは
タイムマシンを使わないなら博士を取り返すと申し出る

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幽霊が再びやってきてピーターも連れてゆこうとするのでタイムマシンに乗って逃げる
着いた一万年後の世界は砂漠で水人間ばかり、一瞬にものを送ることができるドアなども作られていた
続いて一億年後へ行くと寂れていて、カメの甲羅にとげがある怪物がいる
逃げ出してあわてて着いた紀元前では恐竜が襲ってくる
この世界に戻って幽霊を投げ飛ばして、みんなの前にやってきたのだとピーターがしゃべり終わる
人々は奇想天外な話に、証拠はあるのかと問い返すと、なんと博士が生き返る
博士はあくまでタイムマシンの実験を続けるというので、トミーが現れ機械ごと四次元の世界へ連れ去ってしまう

55年時点で、完成した絵柄を持つ安田さん、ストーリーも傑出したでき
この後、三年間の療養に入ってストーリー漫画からしりぞいてしまうのが惜しまれる

2020年4月30日 (木)

昭和漫画館青虫 041 復刻本

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貴重本の部屋を出るとすぐ東の壁は比較的新しい本が並んでいる
復刻本もあり、その中からおもしろいものを選ぶ
やはりアップルボックスの復刻がいい
昭和漫画大全第7集には泉ゆきおの「剣一筋」
「赤ん坊帝国」のリメイクで知る泉さんは時代物にそぐわないように見えるが
初期は貸本単行本に時代物や戦闘物を描いていた
その絵がリアルでなかなかいい

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将軍家より預かった名刀を奪われた指南役の父に代わり奪い返す竜四郎の物語

もう一冊が九里一平さんの「あばれ天狗」
伊藤心齋の図面を狙う暗闇族や龍之進
図面は鉄人28号のような地獄王の設計図
地獄王を手に入れた龍之進は将軍吉宗を攻める
心斎の息子大助はあばれ天狗の助けを借りてこれに対抗するという話

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江戸時代に鉄人のような巨大ロボットが出てくるとんでもない展開がおかしい

2020年4月29日 (水)

昭和漫画館青虫 040 貴重本の部屋

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昼からは貴重本を見せてもらう
村上一夫さんの「七色仮面」は一部の三集を
名高い作品だが、おもしろみは今1つ

貴重本のケースには短編誌の創刊号や希少な雑誌が揃う
日の丸文庫のめんめんがセントラル文庫で出した「怪奇」の3号
松本さんやさいとうさんが興味深い
少女向けでは「泉」や「白樺」の創刊号も読む

若木書房に珍しい少年向け短編誌「迷路」
これは創刊号はなく10号、59年
内容がなかなか豪華
堀江卓「ゴールデンボーイ」16P、5回目
フカイヒロー「嵐」20P
つげ義春「手錠」24P
小坂靖博「死を賭ける男」縦2/5サイズ16P
石黒昇「ダイヤモンド小僧の冒険」29P
つげ忠男「回転拳銃」縦2/5サイズ17P
山口ゆう幸「火がこわい」20P
鳥海やすと「超音シリーズ 空のむさし」27P

少女ものを多く描いている鳥海さんが戦闘ものを描くのが興味ひかれる
ビルマで隼を操る宮本むさしが強敵ホーカハリケン機と対決する話
絵もあっているのが意外な感じ

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2020年4月27日 (月)

昭和漫画館青虫 039 少年向け単行本

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2013年秋の青虫二日目
西側の壁でA5判の単行本をもう少し
作品の少ない姫野ひろしさんは貴重、「変幻ひよどり仮面」59年
遠藤政治さんの「花びらの唄」56年は遠藤信一さんを思わせる絵柄がおもしろい少女向け
いよいよ東側奥の少年向けB6単行本のコーナーへ
少年向けは、時代物や格闘物が多く、内容は読まなくてもわかりそう
少女向けに比べて、ごく少ない閲覧に終わった
なかで選んだのが、戸山潤さんのスリラー作「首のない男」
好美のぼるさんが尾花美好と名乗っていた頃の「髑髏船」55年
両親の仇を討つため髑髏船に乗り込んだ若侍
兄の助けで首領を討ち宝を見つけて帰還するという内容

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癖のある絵柄でとてもおもしろい
1960年代に恐怖物をリアルに描こうとしてくずれた絵柄が残念

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