今週の長編:大和和紀「あさきゆめみし」
全13巻の見所:8巻~10巻
大和さんのというより、古典を素材にしたまんがの代表作として読まれている名作
1~6巻目までは光源氏の栄光の物語、よく知られている部分だが、そこはまんがではおもしろくない
理由は簡単、輝くほどの光源氏は再現しがたいという制約と、数多く登場する姫たちを絵にするとよく似た顔つきで区別つきにくいこと
藤壺と紫の君が似ている(おばーめい)のは仕方ないとしても、葵の上、明石の君なんかも同形
それに夕顔のはかなさも短く語られるだけだし、須磨都落ち場面も悲壮感が少ない
輻輳する内容を次々絵にしていき統一を崩しているからでしょう
ところが、物語の主体が光源氏を離れると随分いきがいい
「あさきゆめみし」は7、8巻目から読むべき
40歳にもなった光に女三の宮降嫁、ここでの紫の上の苦悩はもう主題じゃない
光のライバルだった頭中将の息子、今や宮中の華、柏木が三の宮をかいま見、不義の子を設ける有名な事件
三の宮は黒目に白点なしという自己意識低い女として描かれて、今まで意志だけでなく感情を表さない人形のような存在であったのが、この事件で罪の意識をしょいこみ苦悩する人になって出家してしまう
出家姿の三の宮は画面でもかえって色っぽく見えるほど
柏木の罪の意識もすさまじく、何も責めない光を恐れ、衰弱して死んでしまう
柏木の亡き後、夫人の力になろうとした無二の友人、夕霧が今度は柏木夫人に魅せられてしまう
相思相愛ながらなかなかゴールインできず、思いが叶った時はあんなに幸せだった夕霧ー雲居の雁夫妻に強烈な危機
子だくさんで少し恐妻家、雲居の雁はコミカルな役割を果たしこのまんがの幅を広げている
まじめ一方で浮気なんか考えられなかった夕霧に落とし穴
雲居の雁が嫉妬から、夕霧に来た手紙を取り上げる場面は「源氏絵巻」でも有名な所
どれも一連の恋ゆえの苦悩だが、その発端をとらえるとぞっとするような展開
三の宮に焦がれる柏木はお付きの小侍従を口説き落として寝屋に侵入
いくらぼやっとした姫でも感じるのは恐怖の思いばかり
口から出るのは「いや」と「こわい」ばかりなんだからこれは強姦でしかない
実事の後は、光へ知れたらという恐怖が彼女を襲うことに
夕霧はというと、柏木夫人、二の宮を再三訪問
お付きの女房達は頼れる人は必要と歓迎するが二の宮は迷惑気味
霧が深くなったのを口実に帰らず、寝所に無理に入り込む
彼女の気持ちを察して、事には至らなかったものの明け方戻っていくというのは端から見たら同衾とおなじこと
二の宮の母さえも、夕霧に姿を見せたことが既に夫として身を許していることになると断じているくらい
これじゃ二の宮に自身を守るすべはないじゃない

