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2017年5月27日 (土)

花沢健吾「ルサンチマン」のラスト

作品を知ったのは連載が終わって後、単行本を読んで大いに感激した
二度、三度読む漫画は少ないがこれが三度目
ラストについて気づいたことがあるのでコメントする

話はぶさいくもてない30歳の印刷工坂本たくろーがバーチャル世界(アンリアル)で月子という恋人を得るというもの
月子はアンリアルを作った一人神崎がDNAから最初に育てたその世界の住人
世界のコンピュータに侵入して操作する力を持つ
これに注目したのが、江原を総裁と仰ぐ第九帝国
今では現実界を捨てアンリアルに住む神崎を襲撃し、来合わせたたくろー(この世界では中学生時代の風貌)に月子を託す
ひょんなことでたくろーと関わりを持った印刷所の営業長尾姉さんと月子が三角関係になり
江原総統はアンリアルにたくろーを作って、そちらを本物にするため現実界のたくろーを消そうと誘う
総統は現実全部を消し去ることが目的で、月子の力を借り世界のミサイルをアンリアルから発動しようとした
アメリカのウィルス攻撃で消滅しそうになった月子は、生きたいとの願いを長尾に伝える
長尾はたくろーをめぐる勝負をつけようとそのDNAを宿し現実界に産むのだった
15年後、45歳になったたくろーの弁当屋に15歳になった月子が弁当を買いに来て懐かしいと思う
たくろーは一目見て月子とわかり「生まれてきてくれてありがとう」とかつて神崎が月子に言った言葉を口にするというラスト

ここからが今回の話
最終巻4巻目を手にして、表紙イラストがなんか違和感がある
3巻目まで表と裏表紙が同じシーンを現している
1巻目はたくろーが月子と出会った海岸
2巻目は月子が入り込んだ遊郭を訪れるたくろーと友人越後(アンリアルではラインハルト)
3巻目は学校に通い始めた月子とたくろーのアンリアルでの住まい

4巻目表紙は弁当屋でおかずをつめている月子らしい女性の絵
裏表紙はアンリアルの海岸でふざけあうたくろーとラインハルト

現実界に生まれてきた月子とたくろーの出会いまで描かれどうなったのか不明のまま連載は終わる
どこかにあとがきなど描かれていないかと探してみて、なんとなくカバーを取ってびっくり
カバーを取った表表紙は長尾姉さんが2歳くらいの月子を抱いている図
1巻目から続けてみると月子の原ソフトムーンが成長して、現実に生まれ出たと理解できる

4巻目裏表紙はもっとびっくり
たくろーが喪服を着て越後の遺影を抱いている
越後はたくろーにアンリアルを教えた友人
現実では相手にされず自分にはアンリアルしかないと、第九帝国との闘いに立ち上がる
そのさなか、アメリカのウィルス攻撃を跳ね返すため全力を使いつくす
アンリアルで打撃を受けると現実でも打撃がある
越後は髪も白くなってぐったりソファに倒れこんでいるのが最後の図
越後はこの戦いで命を落としたのだった
そういえば、15年後の坂本弁当のたくろーの背後には両親の遺影に並んで越後の遺影が見える
アンリアルでのアメリカウィルスとの闘いに「我が人生最期の技」と言っているし

さて、カバーの表紙絵(弁当屋の女の子)は、花沢さんのインタビューから月子がアルバイトに来ているようだ
長尾姉さんが月子のDNAを取り込むとき、「たくろーのような男を好きにならない子に育てる」というのに対し
消えゆく月子は「だけどわたし、かならず・・」とつぶやいている
二人の関係がどうなるかわからないけれど、弁当屋でたくろーを見た月子が懐かしい感じを抱いたところからもひかれてゆくというのがわかる
そうすると、裏表紙は?こちらもその後のアンリアルを予想させるものととればよさそう
少女たちが遊ぶ浜辺はアンリアルの平穏を示し、現実に死んだ越後だがなんらかの理由でラインハルトとして生き続けることができたのだろう
アンリアルに生みだされたたくろーは現実のたくろーと関係を持たず、ラインハルトたちとアンリアルで生きてゆく
現実界で命を絶たれてしまった江原総統もアンリアルで生きる道があったかもしれない

現実にいれられない恨み(ルサンチマン)を正面から描いたストーリーが最後に望みをかけるのが現実の弁当屋というのはなんとも皮肉な結末

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